ITDRとは · アイデンティティ保護が優先課題である理由
クラウドでは、境界はもはやネットワークではなくアイデンティティです。攻撃者はファイアウォールを突破するのをやめ、認証を通過するようになりました。従来の多要素認証(MFA)を回避するセッションやトークンを盗むのです。ITDR(アイデンティティ脅威の検知と対応)が守るのは、今まさに重要なもの、つまり誰がどのようにアクセスしているか、そしてそのアクセスが認証後に侵害または悪用されていないかです。ITDRがなければ、攻撃者は正規の認証情報を持って正面玄関から入ってきます。
考え方の転換
長年、セキュリティはネットワークの境界を守ってきました。しかし、データとアプリケーションはクラウドへ移り、弱点もそれとともに移りました。現在の攻撃者はファイアウォールを突破するのではなく、認証を通過します。アイデンティティは新しい境界であり、ITDR(アイデンティティ脅威の検知と対応)はその境界を守る仕組みです。
アイデンティティを守らないことの代償
盗まれた認証情報やセッションは、エクスプロイトよりも価値があります。EDRには見えず、ファイアウォールも通してしまう、正規の目立たないアクセスを与えるからです。そこからビジネスメール詐欺(BEC)、不正送金、データの持ち出しが始まり、いずれも正規のAPIとトークンを使って行われます。ITDRがなければ、侵入は通常のログインにしか見えません。
日本でも、認証情報を狙う入り口は広がっています。フィッシング対策協議会の「フィッシングレポート2026」によると、2025年のフィッシング報告件数は2,454,297件で、過去最多となりました。
ITDRがもたらすもの
アイデンティティを対象とした検知と対応です。Active DirectoryとEntra IDの監視、認証後の異常検知、認証情報やセッションの悪用の遮断、セッションやトークンの迅速な失効を行います。Kali365の事例が示すように、多要素認証がすでに回避された後の攻撃者を捕捉するのがITDRです。
本当に重要になる場合(そうでない場合)
Microsoft 365、Entra ID、あるいは広範なクラウドアクセスを利用していれば、アイデンティティが主戦場であり、ITDRは優先課題です。ごく小規模で完全にオンプレミスの環境で、アカウントが非常に少ない場合は、優先すべきことが別にあるかもしれません(バックアップ、パッチ適用、基本的なハードニング)。しかし、現代の企業の大多数にとって、アイデンティティの防御は任意の対策ではなく、欠かせないものです。あわせてMicrosoft 365のセキュリティもご覧ください。
従来の境界防御とアイデンティティの防御
| 従来の境界防御 | ITDR | |
|---|---|---|
| 前提 | 脅威は外部にある | 脅威は認証を通過してくる |
| 従来の多要素認証 | 十分とみなされる | セッションの窃取で回避される |
| 対象範囲 | ネットワーク、ファイアウォール | AD、Entra ID、セッション、アクセス |
| 検知するもの | ネットワークへの侵入 | 認証後の認証情報やトークンの悪用 |
PhaaSプラットフォームKali365の分析(800ドメインを特定)は、正規の認証の後にOAuthトークンを窃取することで従来の多要素認証が回避される仕組みを示しています。エンドポイントからは何も見えない、認証後のアイデンティティへと防御の重心を移す必要があることの裏付けです。
分析を読む(英語) →よくある質問
アイデンティティを守るには、多要素認証だけで十分ではありませんか?
いいえ、それだけでは十分ではありません。AiTMフィッシング(中間者型フィッシング)やセッショントークンの窃取は、認証の後にアクセスを盗みます。多要素認証そのものは正しく動作していても、セッションはすでに侵害されています。FIDO2やパスキーなどフィッシング耐性のある多要素認証、AiTMフィッシング対策、そして認証後の悪用を検知するITDRが必要です。
ITDRは、EDRでは検知できない何を検知しますか?
Active DirectoryやEntra IDに対する悪用です。Kerberoasting、Pass-the-Hash、DCSync、Golden Ticket、権限昇格、セッションの異常な利用などが該当します。これらはエンドポイントに触れないことが多く、EDRだけでは見逃されます。
なぜ「アイデンティティが新しい境界」なのですか?
データやアプリケーションがクラウドにあるため、常に変わらない境界は誰がアクセスするかだけになったからです。アイデンティティが侵害されると、攻撃者は正規のユーザーとして行動します。だからこそ、アイデンティティは最初に守るべき資産です。
ITDRの優先度が低いのはどのような場合ですか?
ごく小規模なオンプレミス環境で、アイデンティティの数が非常に少ない場合は、優先すべきことが別にある可能性があります(バックアップ、パッチ適用)。しかし、Microsoft 365、Entra ID、あるいは広範なクラウドアクセスがあれば、アイデンティティが主戦場になります。
理論から実際の運用へ
ここで解説した内容を、Fortgaleは2017年からミラノで運用する24時間365日体制のSOCで毎日実践しています。287の脅威アクターを継続的に追跡し、封じ込めまで30分未満で対応します。サービスの詳細:アイデンティティ保護 · ITDR
関連リソース: Microsoft 365のセキュリティ · MDRとは · EDRとは
売り込みではなく、技術的な対話を
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